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デジタル学生証も例外ではない?デジタル化・スマホアプリ化が進む身分証明書
身分証明書のデジタル化やスマホアプリ化が進み、社会生活が便利で効率的に変わってきました。本記事では、国内外の状況や政府の取り組みについて解説します。大学DXを推進する読者に向けて「デジタル学生証」への布石となるマイナンバーカードの学生証利用にも触れていきます。
デジタル身分証明証の実用化 日本国内の状況
デジタル社会で変わる身分証明書
身分証明書とは一般的に公的機関によって発行されたもの、マイナンバーカード、運転免許証、運転経歴証明書、パスポート、健康保険証などが該当します。もう少し範囲を広げて考えると、組織への所属や名前などを証明する、学生証、社員証、会員証といったものも含まれるでしょう。
かつては、カード型の身分証明書の提示、コピーした紙の提出といったアナログな使い方が主流でしたが、状況は大きく変わりました。
「デジタル社会の実現に向けた重点計画」が政府で閣議決定され、様々な分野で社会のデジタル化の指標が明確になっています。国民生活の利便性向上や効率化による豊かな社会実現への機運も高まり、マイナンバーカードを中心にデジタル身分証の実用化が進んでいます。
マイナンバーカードの浸透と本人確認の利用拡大
2024年9月30日時点、マイナンバーカードは、約9,388万枚が発行され、国民の約75%にまで浸透しました。6月にデジタル庁からリリースされた「デジタル認証アプリ」は、わずか2ヶ月で3.9万ダウンロードという伸びを見せています。マイナンバーカードに搭載された電子証明書(認証局という信頼できる第三者が本人であることを電子的に証明するもの)を活用した国内のデジタル本人確認回数は8月までの1年間で5.6億回にも上りました。
「デジタル認証アプリ」で身分証明書のデジタル化が身近に
マイナンバーカードを読み取って簡単に本人確認を行うスマートフォンの「デジタル認証アプリ」では、オンラインで行う税金の申告、電子政府サービスへのアクセス、パスポートの更新申請などで利用できるようになりました。自治体など公的機関はもちろん、横浜市の子育て応援アプリ、三菱UFJ銀行のスマート口座開設、サイバートラスト社の本人確認サービス、ジモティ(地元情報サイト)など民間事業者からのサービス提供も始まり、徐々に身近なものとなっています。私たちの周りでも身分証明のデジタル化が着実に拡大しています。
マイナンバーカード受け取り時の本人確認書類として学生証アプリも利用可能に
マイナンバーカードの受け取り時の本人確認書類にも変化が見られました。2024年5月、総務省の省令改正によって本人確認書類としてスマートフォンの学生証アプリや社員証アプリも認められるようになったのです。スクリーンショットや画面録画でないことを確認するため窓口でのアプリ起動やログインを求められるようです。現時点では補助的な書類と位置付けられ、自治体によって対応状況は様々です。ただ学生証アプリや社員証アプリの普及を背景に、身分証明のデジタル化が大きく進んでいることは確かです。
デジタル身分証明証の実用化 大きく進む海外の状況
デジタル国家エストニアではデジタル認証でほぼ全ての行政サービスの利用が可能
海外の状況にも目を向けてみましょう。デジタル国家といえば、バルト海に面したエストニア共和国があげられます。Skype(スカイプ:無料の通話やチャットなどコミュニケーションサービス)の生まれた国で、多くのスタートアップ、ユニコーン企業を輩出しIT先進国として注目を集めています。国連による「2024年のEGDI(E-Government Development Index:電子政府発展度指標)」では加盟193ヶ国中、デンマークに続き2位を獲得しています。
2002年には既に、日本のマイナンバーカードにあたるICチップ付きのカード「eIDカード」が発行され、国民への普及率はほぼ100%です。2007年にはスマートフォンなどモバイル端末で使用するSIMカードタイプの「Mobile-ID」が希望者へ発行されました。エストニア国内で販売されているスマートフォンであればどの機種でも利用が可能です。これらは身分証明書法で本人確認手段として定められています。非対面でほぼ全ての行政サービスの手続きが可能(結婚と離婚以外、以下資料の時点では不動産売買も対象外)というから日本との差に驚くばかりです。
2016年にはモバイル端末用のアプリ「Smart-ID」もリリースされています。行政サービスの一部への対応ですが、スマートフォンの普及に伴うアプリ化の流れは注目したい点です。
各国で拡大するデジタル身分証明書〜加速するモバイル化・スマホアプリ化の流れ
その他のEU各国、イギリス、シンガポールと世界中で個人認証のデジタル化が進んでいます。2024年10月8日には、EUの欧州委員会から旅行用身分証明書のデジタル化に関する法案のニュースが発表されました。2030年に向けて、EU内外の個人旅行者が「EUデジタル旅行アプリ(EU Digital Travel application)」で事前にパスポートと身分証明書をスマートフォンへ格納しシェンゲン圏(ヨーロッパの29ヶ国・地域)のスムーズな移動の実現を目指すというものです。パスポートをスマートフォンに入れるようなイメージでしょう。フランスやアメリカ、韓国などでも、スマホアプリを用いたデジタル版の運転免許証の運用も始まっています。
このように世界の多くの国々で身分証明書機能のデジタル化、さらにもう1歩進んでモバイル化、スマホアプリ化という流れが加速していることがわかります。
日本国内におけるデジタル身分証明書の展望とモバイル化の流れ
デジタル化で遅れる日本、今後の取り組み
世界から見ると日本の身分証明書のデジタル化というのは、少し水をあけられている感が否めません。そのような中、デジタル庁を中心に日本政府ではマイナンバーカードの利用拡大を目指します。生まれてから亡くなるまで全国民が活用できるインフラとしての普及に向け、健康保険証だけでなく、出生届、運転免許証、在留カード、子ども医療費受給者証などをマイナンバーカードと一体化、救急医療の迅速化への活用、図書館をはじめとした市民サービスへの活用の実現にも取り組んでいます。
マイナンバーカードをかざさず、スマートフォンのみで本人確認へ
2024年6月のデジタル行財政改革会議では、スマートフォンだけで身分証明を実現するための計画に言及しています。マイナンバーカードには電子証明書機能(電子署名と電子認証の機能)と属性証明機能(氏名、住所、生年月日、性別、マイナンバー、顔写真の証明の機能)があります。2023年5月、一部のAndroidスマートフォンを対象にこの電子証明書機能の搭載が始まりました。「スマホ用電子証明書搭載サービス」です。属性証明機能のスマートフォン搭載についても必要な法改正の実施を行なっています。マイナンバーカードの機能をスマートフォンに搭載することで、カードを持ち歩かずスマートフォンだけでマイナンバーカードでできることを順次実現していく計画です。この流れから今後、国内においても身分証明書のモバイル化が主流となることが伺えます。
教育分野におけるデジタル身分証
大学も例外ではなく、デジタル学生証の流れへ
最後に教育分野を見ていきます。マイナンバーカードの普及・利用の推進に関する関係省庁連絡会議(第4回)では教育分野での利用拡大として、学生証活用を推進、受験や成績証明、各種学割という点が上がっています。
「マイナンバーカードの普及とマイナンバーの利活用の促進に関する方針」(令和元年6月4日デジタル・ガバメント閣僚会議決定)では、「大学等における職員証・学生証へのマイナンバーカードの活用を推進すること」とし「大学の保有する学生情報のデータベースから通学定期券発売に必要な情報の確認を行い、購入を可能とする仕組みの検討」にも言及しています。これは学生証の役割の1つ学割のための本人確認機能です。
マイナンバーカードへ情報を登録し学生証として活用する国内大学
マイナンバーカードのICチップの空き領域に、必要な情報を登録し利用する「マイナンバーカードアプリケーション搭載システム」。東京工業大学(現:東京科学大学)は、これを活用し学生証、職員証としてマイナンバーカードを活用しています。滋賀大学では図書館の入退館や自動貸出、演習室のPCへのログイン、各教室への入退出などで、宇都宮大学では図書館の館外貸出や夜間休日の大学への入棟でマイナンバーカードを活用しデジタルキャンパスの実現へ向かっています。
政府主導で官民をあげ推進するデジタル社会、教育から生活、医療に至るまでデジタルの力で便利で安全な先端サービスを実現する中、身分証明書のデジタル化も今後さらに加速することでしょう。学生証も決して例外ではなく、デジタル化、モバイル化の波に乗り、変わって行くのは必至ではないでしょうか。
まとめ
日本国内ではマイナンバーカードを中心に身分証明書のデジタル化を推進しており、官民が連携し豊かなデジタル社会の実現を目指しています。
エストニアでは、ほぼ全ての行政手続きがデジタル認証により非対面で完結するなど先行し、諸外国でもスマホアプリの運転免許証など身分証明書のデジタル化・モバイル化が加速しています。
今後の日本国内においてもデジタル身分証のスマホアプリ化の流れは必至で、学生証も例外ではありません。
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