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大学DX体制の現状と先進的な取り組み事例について詳しく解説

大学DX体制の現状と先進的な取り組み事例について詳しく解説

大学DXは、教育の質の向上、研究の高度化、学内業務の効率化を実現するための重要な取り組みです。しかし、その具体的な方法や効果については、まだ十分に理解されていない面があります。本記事では、大学DXを推進するための体制づくりについて説明するとともに、各大学におけるDXの先進事例を詳しく紹介します。

大学DXの目的とは?その必要性と現状

大学DXは、デジタル技術を活用して、教育の質向上、研究の効率化・高度化、大学運営の効率化、社会連携の強化、学生サービスの向上を目指す取り組みです。大学の競争力を高め、社会のニーズに応えるために、大学運営の各領域でデジタル技術を導入し、変革を推進することが大学DXの目的といえます。

大学DXにおける各領域(教育DX、研究DX、運営・業務DX)の目的やメリットについての詳細は下記コラムをご確認ください。

大学DXの目的とは?大学運営における変革とその効果について詳しく解説

大学DXは、急速に変化するデジタル社会において、大学が持続的に発展していくために不可欠な取り組みとなっています。しかし、現状では、多くの大学がDXの必要性を認識しつつも、具体的な推進方法や体制づくりに苦慮しているのが実情です。大学DXを成功させるためには、明確なビジョンと戦略、強力なリーダーシップ、全学的な協力体制が欠かせません。同時に、デジタル技術の活用に関する教職員の意識改革と能力開発も重要な課題です。

大学DXを推進するための体制づくり

DX推進のための組織体制の重要性

大学DXを確実に推進するためには、DX専門のチームや体制を適切に構築することが極めて重要になります。

デジタル化は大学の根幹にかかわる大改革であり、教育、研究、経営、業務プロセスなどのあらゆる側面に大きな変革をもたらします。そのような大規模な変革を成功に導くには、専門性の高い人材を十分に確保し、責任体制を明確にしたうえで、戦略的にDXを推進していく必要があります。

DX推進の体制やチームが不十分であれば、部分最適の対応に終始し、本来なすべきデジタル改革が立ち遅れるおそれがあります。現場では混乱が生じ、デジタル化の阻害要因が解消されず、変革の足かせとなってしまうでしょう。

DX専任の強力な推進体制とチームを構築することで、全学的なデジタル戦略の策定と施策の統括管理が可能です。部門間の調整を円滑に行って、デジタル人材の最適配置と能力の最大活用も図れます。大学全体として、スピーディーかつ総合的なデジタル改革を実現できるでしょう。

DX推進体制の特徴と構築ステップ

DX推進体制には、大きく分けて「集中型」と「分散型」のふたつのタイプがあります。

DX推進体制①:集中型

集中型のDX推進体制では、全学的なDX推進の司令塔となる組織を設置し、そこに人材や権限、資源を集中させます。具体的には、以下のような流れで体制を構築します。

  1. 全学的なDX推進組織を設置する。(例:DX推進本部)
  2. DX推進組織に、専任の人材を配置する。(例:専門家の採用や学内からの人材登用)
  3. DX推進組織に、予算や意思決定権限を集中させる。
  4. DX推進組織が中心となって、全学的なDX推進の方針を策定し、各部局の取り組みを支援・調整する。

集中型の利点は、DXに関する意思決定や資源配分を一元化できることです。DX推進組織が全学的な視点でDXを俯瞰(ふかん)し、優先順位を決めて推進することで、スピード感のある大胆な変革を進められます。また、DXに特化した専門人材を集約することで、高度な知見を結集したDXの推進が可能となります。

一方で、集中型の課題としては、各部門の特性や自律性を十分に考慮したDXの推進が難しくなる可能性があることが挙げられます。全学的な方針と個別部門のニーズとの間でギャップが生じるおそれがあるため、現場の理解と協力を得ながらDXを進める必要があります。

DX推進体制②:分散型

分散型のDX推進体制では、各部局にDX推進の権限と責任を持たせ、部局レベルでのDX推進を重視します。具体的には、以下のような流れで体制を構築します。

  1. 各部局にDX推進責任者を設置する。
  2. 各部局のDX推進責任者に、予算や意思決定権限を付与する。
  3. 全学的なDX推進組織を設置し、各部局のDX推進責任者で構成する。(例:DX推進委員会)
  4. DX推進組織で、全学的なDX推進の方針を議論し、各部局の取り組みを共有・調整する。

分散型の利点は、各部門の自律性を尊重しつつ、きめ細かなDXの推進が可能なことです。各部門が主体的にDXに取り組むことで、現場のニーズに即した創意工夫が生まれやすくなります。また、部門ごとにDX人材を育成することで、組織全体のDXリテラシーの底上げが期待できます。

課題としては、全学的な整合性や統一性を確保することが難しくなる可能性があることが挙げられます。部門ごとにDXの方向性やスピード感が異なると、全学的なDXの推進力が弱まったり、部門間の連携が取りにくくなったりするおそれがあります。そのため、全学的な調整・支援組織による的確なマネジメントが欠かせません。

集中型と分散型はそれぞれ一長一短があるため、大学の規模や特性、DXの目的や段階に応じて、最適なモデルを選択・組み合わせることが重要です。また、いずれの体制においても、トップのリーダーシップ、全学的な協力体制、DX人材の育成が不可欠な要素となります。

事例紹介:先進的な大学のDX推進体制

九州大学

九州大学では、2021年度に全学組織として設立した「ラーニングアナリティクスセンター」を中心に、DX推進の集中型体制を構築しています。このセンターの特徴は、研究主導のアプローチにあります。所属研究者たちは、ラーニングアナリティクスに関する豊富な研究業績を持ち、国際会議での論文発表や学術大会でのアワード受賞など、着実に実績を積み重ねています。この強固な研究基盤が、大学全体のDX推進を支える土台となっています。
同時に、九州大学は分散型の体制も効果的に活用しています。特に「学習支援窓口のワンストップ化」では、学生主体の組織との連携を重視しています。具体的には、学生組織と協力してAIチャットボットの構築・運用を行っており、学生のニーズを直接反映させたDX推進を実現しています。この取り組みにより、大学のDX推進がより包括的かつ実用的なものとなっています。

香川大学

香川大学では、DX推進のために、学長直下に「情報戦略室」を設置し、デジタル化統括責任者(CDO)を任命するなど、迅速な意思決定ができる集中型の体制へと組織を変革しました。

DXを現場から進めるために、同大学では教職員のデザイン思考能力の育成にも力を入れています。「DXラボ」と名付けられたチームを中心に、「業務UX調査」、「業務改善アイデアソン」、「業務システム内製開発」、「業務システム開発ハンズオン」という4つの取り組みを行ってきました。これらの活動を通して、2023年2月現在で50を超えるシステムを内製開発し、学内外から約200名がハンズオンに参加するなどの大きな成果を上げています。

同大学のDX推進体制は、現場レベルでの業務改善に重点を置いています。学長のリーダーシップのもと、現場の教職員と学生が主体となって取り組みを進めている点が特徴です。デジタル化を手段としてとらえつつ、足元からの地道な業務改善を積み重ねることで、大学全体のDXを推し進めています。

関西大学

関西大学では、「DX推進会議」を中心とした集中型の体制が構築されています。全体調整と進行管理を担うDX推進会議は、各部署での取り組みの進捗状況や効果を把握・分析し、全学的な視点から評価・改善を行います。

一方で、実際のDX推進の取り組みは、各部署が主体的に進めていく分散型の要素も持ち合わせています。各部署は、DX推進会議の方針に沿いつつも、それぞれの特性や状況に応じて、柔軟にDXの取り組みを進めていくことが求められます。

同大学のDX推進体制は、集中型を基本としながらも、分散型を取り入れて、各部署が主体的にDXを推進しているといえます。

まとめ

大学DXの現状と先進的な取り組み事例について紹介しました。大学DXの推進チーム編成では、さまざまな要素が重要であることがわかります。具体的には、全学的な推進組織の設置、多様な専門性を持つメンバーの参画、学内外関係者との共創、学生の参画などです。各大学が自らの特色を生かしながら、効果的なDX推進チームを構築していくことが求められます。大学DXの推進は、これからの大学経営において不可欠の課題といえるでしょう。

このような複雑かつ重要な分野においては、専門知識と適切なツールの選定が必須です。アシアルは、高い技術力と最先端テクノロジーへの素早い対応を強みとし、大学DXの実現に向けたソリューションを提供しています。既存システムとの連携の柔軟性や、使いやすさを追求したUIデザイン、オープンソースを活用したコスト効率の良さなど、アシアルのサービスは多岐にわたる利点があります。詳細なサービス内容やご相談については、お気軽にお問い合わせください。

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